研究概要 |
研削加工においては, 研削点で発生する研削熱の一部は研削油剤及び切り屑に持ち去られるが, 残部は砥石と工作物に流入する. この場合砥石の熱伝導性が良ければ, 研削温度は低下し工作物への熱の流入割合は小さくなるから, 加工精度及び加工面特性は向上し, 高品質研削加工が実現可能とする. そこで本研究ではレジノイド砥石の結合剤中に熱伝導性が高いアルミニウム粉を混入し, また無気孔とすることによって, 熱伝導性の高く, また切れ刃支持剛性などの機械的特性の良好なレジノイド砥石(APPLE砥石)を開発した. このAPPLE砥石を用いて研削加工における砥石と工作物に流入した研削熱を温度分布と熱変形の観点から検討した. 砥石と工作物の接触弧内に発生する研削熱は, 工作物を熱変形させるのみならず, 多かけ少なかれ研削砥石に流入し, 砥石をも同様に熱変形させていると考えられる. この砥石の熱変形は砥石と工作物との実干渉量を変化させ, 寸法生成過程に影響を及ぼすと考えられる. 従って, APPLE砥石を用いた研削加工の高精度化を達成するためには, 工作物の熱変形とともに砥石の熱変形をも考慮する必要がある. そこで, 本研究では空気マイクロメータを用いて停止の熱変形量を砥石台の急速バック方式で工作物の熱変形量をそれぞれインプロセスで測定し, その変化過程について解析した. その結果, 砥石と工作物の熱変形速度を考慮すると, 研削熱の発生が顕著な円筒プランジ賢察過程における寸法生成過程は従来のそれとは異なる様相を示すことを明らかにした. さらに, ビトリファイド結合剤, 従来のレジノイド結合剤及び本研究のAPPLE結合剤を用いた砥石で研削実験を行ない結合剤の種類による砥石の熱変形量の差異を比較検討し, APPLE砥石は高熱伝導性のため, 従来のレジノイド砥石に比べ砥石の熱変形量は格段に小さく高精度研削加工に適用可能な砥石であることを明らかにした.
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