研究概要 |
61年度の1次試作では静剛性の著しく高いエアスピンドルを開発できたが, ラジアル方向の減衰が小さいという問題があった. そこで62年度は減衰の向上を最大の課題として2次試作・試験を行い, 以下の成果を得た. (1)共振点のスクィーズ数を与えて, エアスピンドルの共振点のQ値を推定する軸受設計法を確立した. (2)この設計法を用いて外径110mm, 内径55mmのスラスト軸受, 長さ50mm, 径50mmのラジアル軸受からなるエアスピンドルを静剛性と減衰の観点から最適設計し, 試作・評価した. その結果, 0.49MPaの給気圧力の下で, 静的なラジアル剛性110N/μn, スラスト剛性500N/μn, 傾き剛性39×10^5N/radが得られ, 又共振点のQ値はラジアル15, スラスト16, 傾き10が得られた. これらの特性は既存の同寸法のエアスピンドルの最良値相当以上である. (3)エアスピンドルの振動モード, 減衰比, 動剛性を実験的に同定するモード解析法を確立した. (4)試作したエアスピンドルの高速回転試験をベルト駆動により行い, 駆動回路の最大能力である9000romまで問題ないことを確認した. 9000romにおける空気の摩擦による消費電力は約80Wである. (5)本研究で用いた数値解析法は, 実際の空気膜の静剛性および減衰をかなり正確に評価できる. しかし, 給気圧力が高く且つスクィーズ数が高い領域では, 空気膜剛性の理論値は実験値とずれる傾向をもつ. 以上の結果, 本研究は当初の目的をほぼ達成し得たと判断するが, 剛性を現状程度に保ちつつ減衰をさらに向上させるのはかなり困難であることも明らかとなった. 新たな設計思想に基づいて軸受の減衰を約5倍増加させることが今後に残された最大の課題と考えられる.
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