研究概要 |
従来, 超電導マグネットのクエンチ検出は, マグネットの端子電圧を測定することにより行われてきた. この方法は装置が簡単であるが, 微小な電圧変化を検出せねばならず電磁誘導雑音の影響を請けやすく, また, 電圧測定用のリード線をマグネット導体に直接つけねばならないため, 電気絶縁上のトラブルが多い. このため, 電磁誘導の影響が多くあるマグネット, たとえば超電導発電機の回転子, 高電圧が印加されるマグネット, たとえばパルスマグネットには電圧法によるクエンチ検出は適用困難である. 我々は1本のファイバに2本の光学的コアをもつデュアル・コア・ファイバを利用し, マグネットのクエンチを検出する方法の開発を行った. この方法はマグネット巻線上にデュアル・コア・ファイバを巻き込み, クエンチ時の巻線の温度上昇を, 2本のコアの光路長の差異による干渉縞の移動を測定して検出する方法である. この方法では温度センサである光ファイバは超電導体と電気的に絶縁されており, 信号検出も光学的に行われているため電磁誘導雑音に対して強く, また高電圧が印加される場合でもクエンチの検出が可能である. 我々は室温部と極低温部の間の温度分布に影響されず, 極低温における温度変化のみを検出することのできる光路構成を考えた. 基礎的な実験により, 3〔m〕程度の長さのデュアル・コア・ファイバにより4.2〔k〕領域において, 1〔k〕の温度上昇が検出可能であり, クエンチ検出に充分な感度を有することを確かめた. この方法により, デュアル・コア・ファイバわ巻き込んだ小型コイルを用いて実験を行い, 実際にクエンチが検出できることを確かめ, また励磁中のマグネットの応力変化による影響も少ないことも確かめた. 本研究により従来不可能であると考えられていたパルスマグネットや, 超電導発電機の回転子などのクエンチ検出の可能性がでてきた.
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