研究概要 |
本研究は, 溶融射出部と冷却ディスクを高速逆回転させる筆者ら考案の新しいアトマイズ法を用いて磁性微粉末を作製し, それら試料粉末による磁石の試作を目標とした2カ年の計画で, 成果の概要はつぎのとおりである. 1.第1年度は, 微粉化効率を上げるために, 既存の粉末作製装置の原型機を大幅に改修した. すなわち, 本方法で最も重要な原料合金の溶融回転射出部に, 新たに設計したACサーボモータ高速起動射出装置を取り付け, また高周波溶解を可能にした. さらに冷却用銅ディスクおよび溶融射出用ノズルの形状寸法についても検討を重ね, Fe-B系合金の粉末を種々の条件で試作した. その結果, 微粉化に必要な作製方法・条件についての基礎的知見が得られ, 初年度の基本的な目標をほぼ達成した. 2.第2年度は, さらに高い微粉化効率と試料粉末回収の歩留まり向上のために, 装置の真空容器の一部を拡張した. また溶融射出合金と冷却ディスク間のぬれ性を低下させる必要があることが分かったので, 種々の検討の結果, カーボンディスクを試作し, 希土類系磁性合金粉末を作製した. その結果, ミクロン〜サブミクロンの微細結晶組織をもつ直径10〜数10μmの真球度のよい磁性微粉末を作製することができた. (製法に関する特許申請) 3.当初の計画では最終段階で試作微粉末による磁石の作製を予定していたが, 微粉化に必要な装置の種々の改良とそれに伴う実験に予想外の多大の時間を要したので, 高性能磁石の試作に至らなかった. しかしながら, 本研究の製法が他のアトマイズ法にない特長・利点を有することを明らかにした. 磁石の試作は, 現在進めている粉末の磁石特性向上の実験の結果を待って, 近く行なう予定である. また本製法を一層確立するための装置の改良と実験を続け, 硬質磁性粉末のほかにアモルファス軟質磁性粉末の試作も開始する予定である.
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