研究概要 |
サブピコ秒時空間波形解析装置の試作は現有ジョセフソン・サンプリングシステムを基本として行い, 被観測波形の入力に対する時間掃引部を電気的な掃引法により構成した. この段階で超伝導回路を鉛合金系により製作し時空間波形解析装置の原理を検証する実験を行った. この実験により量子, 反量子ソリトンの衝突後の対消滅過程を時空間にわたる直接観測波形として得ることに成功した. この結果は固体内の量子ソリトンの相互作用を直接にとらえた, これまでに例のない初めての成果である. これにより時空間波形解析装置の原理が実証されたとともに, 量子ソリトンがローレンツ収縮を行うこと, 対消滅にあたってブリーザ・ディケイモードを取ること, 衝突消滅には約10psの時間が必要なこと等が初めて実験的に証明された. これらの結果は数値解析との比較においてもよい対応を示し装置自体の高い精度も保証された. この結果はLT18, ISEC87などの国際会議や, Physical Review Letter誌などにおいて発表し大きな反響を得た. これにより時空間波形解析装置の有効性や信頼性が広く世界的に承認された. さらに鉛合金系による試料は歩留り, 経時変化ともに悪く, 十分な再現性のあるデータを得ることは難しいと判断し, ニオブ系への移行を積極的に進めた. 第1段階としてニオブ系接合は工業技術院電子技術総合研究所において製作した. マスクパターンの設計, 製作は東北大学で行い, もちろん時空間波形解析装置を用いた測定一切は東北大学において行った. この測定により量子ソリトン列と反量子ソリトン列のジョセフソン線路内における伝搬, 衝突, 衝突後の消滅, 透過などを新たに測定しそれらの線路バイアス依存性とともに再現性のよい詳細な実験的解析を行い研究会で発表した. さらにジョセフソン接合の等価インダクタンスを用いた線路におけるフラクソイド列の伝搬についても初めて実験的に観測することに成功した.
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