研究概要 |
カイザー効果により履歴応力を推定する研究では, 次の研究成果が得られた. (1)コンクリート供試体の破壊応力を基準とした履歴応力の載荷レベルごとに, 履歴応力の推定精度は履歴応力の載荷速度に依存して変化するが, ほとんど破壊したような状態を除けば, 影響は小さく, 推定誤差の平均値は約4%である. (2)履歴応力の推定誤差は水セメント比が一定の場合には細骨材率と共に増加し, また, 細骨材率などが一定の場合には水セメント比と共に増加するが, 推定誤差の平均値は約6.5%と小さい. (3)高さ, 幅及び長さが, 15, 15, 53cmの交番載荷を受けた無筋コンクリート梁から採取したコアを用いた履歴応力の推定誤差は圧縮及び引張応力の各場合でそれぞれ平均約18%と約9.5%であった. また, AEデータからコンクリートの損傷度を評価する研究においては, AE事象総数の対数値の単位非弾性縦歪あたりの増加率を表わすパラメタmを定義して, データを整理し次の成果を得た. (1)コンクリートの強度とm値は良い相関を有し, 強度が高いほどm値は大きくなる. (2)凍結融解作用や繰り返し載荷により損傷を受けたコンクリート供試体のm値は損傷度が大きいほど小さくなる. これらより, m値は微視的及び巨視的クラックの発生・進展に対する抵抗力の大きさを表わす指標とみなすことができる. AE法により, アルカリ骨材反応が生じる骨材であるかどうかを早期に判定することを目的として行った研究では, 次の成果が得られた. (1)反応性骨材を用いて作成したモルタル供試体のAE事象発生頻度には2〜10日の間に最大値が存在し, この最大値は反応性を有しない標準細骨材を用いてて作成した供試体からのAE発生頻度に比較して著しく大きい. (2)モルタル供試体の膨張量とAE事象総数の間には良い相関々係がある. 上記の研究以外に, 従来のAE位置標定法の精度を改善するソフトウェアーの開発を行い, AE波形解析などを行なった.
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