研究概要 |
粘性土の微視的変形機構を動的に直接把握することを目的として 走査電子顕微鏡に実装しうる超小型せん断試験機を試作した. せん断試験機は全体システムとして, 垂直・せん断荷重を負荷し, せん断変位量とダイレイタンシー量を検出しうるように工夫され, せん断面での粒子移動をVTR装置に記録されるようになっている. 対象試料として 圧密カオリン粘土を用いて, 超小型せん断試験機システムによって得られた微視的変形挙動は以下のようにまとめられる. 1.乾燥条件という制約の下ではあるが 巨視的な応力-ひずみに対応する微視的な粒子の動きをVTR装置に記録することに成功した. 2.ピーク強度に達するまでは, 一面せん断変形に対応した曲げ応力が供試体端部に発生し, これに伴うクラックの発生が明確にとらえられた. 3.ピーク強度付近では, ダイレータンシーが最大値に達しようとしておおり, ピーク前に生じたマイクロクラックとは無関係にリーデルクラック面, およびこれを連続させる主せん断面がみられる. 4.残留強度に至る大変形後には, 局所的な粒子移動がせん断面付近のみに起こり, ペッドの破壊・回転・細粒化が著しく生じているにもかかわらず, 全体の巨視的ダイレイタンシーはほぼ一定値に達している. 5.VTRに録画された微視的変形挙動は, 画像処理によって粒子の移動の定量化をはかり, せん断ピーク前の微視的粒子移動の遅れと, ピーク後の大きな変形量とが明らかになった. 今後の課題として, 試料ホルダー部と試料溶媒置換とについての工夫を行い, 湿潤粘土をも取扱えるようにすることと, 試料ホルダーの剛性を高めて, ピーク前の曲げ応力の発生を小さくすることを挙げることができる.
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