研究概要 |
土砂災害の軽減対策として, 予め氾濫危険地域を指定して居住を制限したり, 避難態勢をとったりするソフト対策が注目されているが, 本研究はその基礎となる危険範囲指定の手法を確立することを目的に行ったものである. すなわち, 氾濫の原因となる土砂流出量の予測に関して, 浸透流シミュレーションによる崩壊発生時刻および発生場所の予測法, 崩壊土砂が渓流を堰止めて天然ダムを形成する場合のダムの形状, 規模, その決壊による土石流規模の予測手法についての研究を行い, 従来の渓床堆積土砂の流出量予測手法と合わせて, より的確な総合的な予測手法を提示した. 流出土砂の規模および性質が予測されたとき, これが人間の居住空間にどのように氾濫・堆積し, どのような災害をひき起すかといったことがらの予測法の確立は本研究の主目的であった. これに関しては, まず, 流出土砂の性質として, 石礫を主体とする場合と, 微細砂を主体とする泥流状のものとに注目し, それぞれの場合の氾濫・堆積シミュレーションの方法およびそれにもとづく危険度別危険範囲の指定法を示した. この手法の適用性については, 岐阜県洞谷で起こった土石流およびコロンビアのネバドーデル・ルイス火山の噴火に伴って発生した巨大泥流について実証している. 土砂災害は土石流, 泥流の一次的な通過および堆積によってのみもたらされるものではなく, それらの堆積の後続流あるいは新たな洪水による浸食と二次堆積によってもたらされるものも重要であるので, その数値シミュレーションによる予測手法も新しく開発した. さらに, 土石流は先端部に石礫を多く含み, 後続部では泥流的性質を持っている. このことが土石流の破壊力や堆積物中の粒度ぶんぷを決定する重要な要因となっているので, 新たに, 堆積過程における粒度分布の変化についても数値シミュレーション法を開発した.
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