研究概要 |
耐火試験結果に影響を及ぼす要因を, 加熱炉, 測定方法及び試験体特性に分けて検討し, 標準化補正として検討すべき要因を抽出した. 次に, 既往試験データーの調査と分析を行い, 裏面温度に及ぼす要因の影響を明らかにした. その結果, 強度が大で耐火時間の長い試験体が, 典型的な温度の横這いを示す割合が多く, 裏面温度と厚さ, 含水率, 試験開始温度及びたわみ率との相関がみられた. これに反し耐火時間及び強度が小となると, 耐火性能のばらつきが大となり, 相関もなくなることがわかった. 次に要因として9項目を選び, 実大耐火実験を行った. その結果加熱温度時間面積が等しくても, 最高温度が高い程裏面温度が高く不利になる. 合成床では, 底板がない場合に較べ裏面温度が低くなる. JIS規格とISO規格を比較すると, 前者は裏面温度を高く測定している. 炉内温度も前者が後者より高い値を示す. 冬期の試験は夏期に較べ有利である. 含水率が大となると横這時間が長く, 裏面温度も低くなる. 含水率が等しい場合, 裏面温度はモルタル, 軽量コンクリート, 普通コンクリートの順で高くなるなどが判った. また熱伝導率, 熱拡散率, 比熱, 空隙率, 水分拡散係数, 吸着等温線熱分解特性を実測した. モルタルと粗骨材の熱伝導率よりコンクリートの熱伝導率を推定したものは, 実物測定値と極めて良く一致した. 次に耐火試験をシミュレートするため, 拡散モデルの微分方程式を積分方程式に変換し, 対角陰ルンゲクッタ法により解き, 安定で能率よく解けることを確めた. これを用いた計算は, 実験値と実用上充分な精度で一致した. また5つの要因に対し感度を求め, 裏面温度に対する影響は炉内温度, 熱伝導率, 含水率, 冷却曲線, 気温の順になることを示した. 更に, 実際に生じうる範囲では, 熱伝導率, 加熱温度, 含水率, 裏面熱電対支持法, 気温, 冷却曲線の順で補正が必要となる.
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