研究概要 |
本研究では, 選鉱プロセスの安定化制御の手法として, MRACS(モデル規範型適応制御システム)の適用を検討した. その第一段階として, 実プラントへの適用に際して従来から指摘されてきたMRACSの問題点を洗い出し, それに対する一つの改善策を提案した. そして, 実験室レベルでの連続式浮選条件槽のpH制御に対して, この方法を適用し従来型のMRACSおよびPIDコントローラとの比較を行った. その結果から次のことを得た. (1)出力に大きなノイズが加わる時, 従来型MRACSでは制御が困難. (2)ノイズが小さい, または存在しない時, 適応制御ではパラメータの真値への収束が遅い. (3)出力に大きなノイズが加わっても, 本研究で提案した改善策を用いれば, その影響を小さくできる. (4)pHの感度が低ければ, 従来型でもノイズの影響を受けず十分な制御が可能. (5)PIDコントローラはノイズにほとんど影響されない. (6)プラントの状態が未知, あるいは変化する場合MRACSはPIDコントローラより安定に制御ができる. (7)状態変化に対する追従性は従来型MRACSが最も優れている. (8)状態が頻繁に変化する時, 従来型のMRACSはパラメータ変動に対するロパスト性の低さから, 不安定となる. (9)状態が頻繁に変化する場合でも, 改善型MRACSでは, 感度の高い状態にパラメータを調節し, 操作量の変動を抑える傾向にある. (10)改善型MRACSでは, 推定誤差の不感帯の範囲内でリミットサイクルを生じることがある. 以上のことより, 改善型MRACSは推定誤差の範囲内でのリミットサイクル, 状態変化に対する追従性の悪さなど従来型に劣る点もあるが, ロバスト性は改善され, 全体的な安定性は向上した. パラメータ調節が必要なPIDコントローラに代わり, 改善型MRACSを浮選プロセスの安定化制御に用いることが期待される.
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