研究概要 |
本研究は, 地下資源の開発や地下を有効に利用するための岩盤開発において, 地下空洞の開さくや維持にあたり, 岩盤内のAEの監視によって破壊を予知し, 適切な安全たいさくを科学的に探究することを目的としている. そこで, 原位置の地下岩盤内の環境条件下での使用に耐え, 微小地震やAEの定常的発生からの逸脱を定量的に検知することのできる岩盤破壊監視装置の試作に目標をおき, その装置のハードウェアおよびソフトウェアの開発のための基礎的研究と, 微小地震やAEの発生を自動的に検知し, その時系列を計測してパラメータ化する監視システム構築の準備研究を行った. まず, AE振幅弁別器(8段階), 時計, データ記録用補助メモリ, マイクロコンピュータからなる時系列計測装置を試作した. この装置を用いて, 大島花崗岩の円柱形試料(直径455mm, 高さ110mm)を用い, 破壊強度の約80%の一軸圧縮応力下でクリープ破壊実験を行い, その間の岩石試料内におけるAEの発生レート, 規模, 時刻を自動記録して, AE発生時系列の特徴とその変化状況を調べた. その結果, 一定応力下の岩石が主破壊に先行してAEの発生時系列の特徴が変化することをつきとめた. さらに, AEのランダム性をX^2検定により各クリープ領域でポアッソン過程とみなせるかどうかを調べたところ, その規則性を見出すには至らなかった. しかし, 主破壊に近ずくに従い, すべてのAE発生過程と大きなAE発生過程は定常ポアッソン過程とみなせないことがわかった. さらに主破壊直前には大きな規模のAEがその後に続くAEを抑圧するように発生していることがわかった. 本研究の2年目には試作した計測機器類を地下掘さく現場に持ち込んで原位置での微小震動の事例研究を実施する予定であったが, 適当な現場を見つけることができず, 実験室における改良研究を行った.
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