研究概要 |
近年進歩の著しい高分解能電子顕微鏡法の応用を, 高温領域にまで拡張し, 各種の材料中でおこる構造変化を原子スケールで追究するための新しい装置を開発することが, この研究の目的である. このため現有の200KV透過電子顕微鏡(JEM-200CX)に適合する(1)試料加熱用ホルダー, (2)対物レンズポールピース, (3)2軸傾斜駆動装置を作製した. ついで, 電顕画像を記録解析するためのコンピュータシステムを導入し, in-situ観察系を構成した. まだ全ての機能を完成するには至っていないが, 高温(約400°C), 高分解能(点間0.2nm)で, 結晶構造の変化の過程をin-situで追跡することができた. その一つは, 非整数長周期規則構造を有するAg3Mg合金の非整合-整合転移のその場観察, 他の一つはL1o型規則構造CuAuIから一次元長周期規則相CuAuIIの生成過程の研究である. 前者は約320°Cで間隔0.8nmの格子像を直接観察することができた. また後者では約350°Cで2nmの格子像の生成, 移動, 消失を連続記録した. これらは, 合金における拡散型相転移の機構について, 直接的な知見を加えた成果であり, 高温・高分解能像観察法の有用性を示したものである. 加熱ホルダーと対物レンズの仕様の概要は次のとおりである. :トップエントリ型,X,Y傾斜±10°C,最高温度800°C,電流1.2A,W-Re熱電対,Cs=1.01mm,C=1.55mm. また画像記録解析用には, マッキントッシュIIコンピューター(32bits)を購入し, これにウインチェスター型外部記憶装置とモニター(640×480dots,256階調)を組合わせた. TVカメラから入力した画像のデジタル化, 疑似カラー化はもちろん, シミュレーション像のマルチスライス法による計算, 大型計算機センターへの転送も可能である.
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