研究概要 |
機械構造物の非破壊検査とそれを踏えた材料強度と安全評価を信頼性の高いものにするには, 部材に加わっている応力と材質の両方の情報を同時に結合させて材料強度評価を行える非破壊検査法を開発することが不可欠となる. 本研究では, この目的が可能で, かつ鉄鋼材料の経年劣化と強度評価に最適で有望なバルクハウゼンノイズ(BHN)法の実用化を目指したが 前年度(昭和61年度)までにBHNセンサーと計測システムの開発に成功した. そこで, 以上の経過を踏えて本年度(昭和62年度)は(1)一般的な機械構造物表面での二軸応力下でのBHN計測(現在不明のBHN出力と各応力成分の関係)を行ない, BHN出力が主応力差に依存することを明らかにした. そして, 円孔切欠試験片での応力評価を試み, 有効性を示した. 次に(2)マイコンとBHN計測システムを直結させて計測用ソフトを作成した結果, 現在大きな問題になっているタービン用ローター材(Cr-Mo低合金鋼)の経年劣化に伴う微視的な組織変化の検出に成功した. さらに, (3)このシステムにより黒鉛鋳鉄や焼き入れ鋼の金属組織と強度の非破壊評価にも成功した. また溶接構造物の残留応力計測への可能性を示すこともできた. 以上の成果は順次学会等で発表してきたが, 強い関心を受けることができ, これまでに10社程度から問合せと共同研究の申込みをいただいた. 以上, 当初目標としたBNH法による鉄鋼材料の非破壊的材料評価(応力と材質の同時評価)の可能性を明確に示すことができた.
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