研究概要 |
本年度は パルスめっき法によるNi-P,Co-P,Co-Mo,Pd-P非晶質膜の製造および特性評価を行った。Ni-P非晶質合金については日本金属学会誌に発表したが、急冷法では不可能な100μm以上の試料を40%以上の電流効率で製造できることがわかった。パルス条件の効果は顕著で、デューティ・サイクル0.2,ピーク電流10×【10^2】A/【m^2】でP含量は殆んど変化しないにも拘らず、X線のNiピークは殆んど消失し、良好な非晶質合金が得られ、その酸性硫酸水溶液中の耐食性は、Niの1/100に減少した。また、この合金は、耐食性が良いと同時に、水素発生の過電圧が小さく、水電解用カソードへの応用が考えられる。Co-P合金についても、日本金属学会誌に発表したが、耐食性の優れた非晶質Co-P合金が得られた。この合金では、パルス電解の効果は、電析表面が平常化し、極めて低いP含量(3.84質量%)にも拘らず合金を非晶化することにある。また電析非晶質Co-P合金も、硫酸水溶液中において高耐食性および高水素電極反応触媒活性を示し、Ni-P合金と同様に、水電解用陰極としての応用が考えられる。Ca-Mo合金についても、デューティ・サイクル0.2で、41質量%Moの極めて良質の非晶質膜が得られた。Co-Mo合金についても、水素電極反応の触媒活性は、ほゞ白金に匹敵する。この合金の製造過程で、ある条件で金属間化合物【Co_7】【Mo_6】の析出が観測された。これは、耐食性は極めて悪いが、幾つかの興味ある性質を示すので今後研究を続ける予定である。Pd-P非晶質膜の作成は成功したが、期待に反してその電極特性ならびに耐食性の向上はあまり見られなかった。さらに第三元素の添加が必要と思われる。Fe-P,Cr-P合金についての研究は現在進行中である。また上に挙げたNi-P,Co-P,Co-Mo等について磁性の測定を行っており、非晶質化により磁性に大きな変化が見られたがまだ系統的な知見は得られていない。
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