研究概要 |
溶接部の硬さは、そこにおける材料の強度,じん性,延性の目安となるので溶接条件の設定に際しは、必ず硬さ分布の測定が行なわれる。しかしながら実際の溶接構造物における溶接部の硬さ分布は、適当な非破壊測定法がないために、ほとんど検査されていない。本研究は、X線回折強度分布曲線の半価幅をもとに溶接部の硬さ分布を推定する検査法を確立するために行ったものである。得られた成果を要約すると次のようになる。 (1)X線にクロムの【K_a】線を用いて、炭素含有量の種々異なる鋼材に熱処理を施した硬さの異なる試験片の回折強度分布曲線を測定すると共にビッカース硬さの測定を行った。回折強度分布曲線の半価幅とビッカース硬さの間には良好な相関々係が認められビッカース硬さで、±10kg/【mm^2】のバラツキの範囲内で、半価幅値から硬さを推定できることを明らかにした。 (2)回折強度分布曲線の半価幅と硬さの関係は、炭素含有量0.4%を境いとして2本の直線で与えられるが、普通の構造用鋼は炭素含有量は0.2%であるので、両者の関係は1本の直線によって与えることができることを確めた。 (3)軟鋼から100kg/mm級高張力鋼までの5種類の構造用鋼について、溶接部の硬さ測定をX線およびマイクロビッカースを用いて行なった。ここで得られた硬さの測定値は、上記(2)で求めた直線とよく一致したことから、本研究で確立した確さ測定法の実用化の見通しを得た。なお、この実験では携帯用小型ゴニオメータを用い平行ビームのX線を用いたため硬さの精度は(1)の結果より、若干劣り、10%信頼限界が±20kg/【mm^2】となったが、実用上は差支えない。
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