研究概要 |
試料表面温度に伴う発光スペクトル形状変化について測定を行った. 試料はアルミニウム表面ジオクチルフタレートで, 表面温度60゜40゜20゜10゜で測定を行った. この際, サーモモジュール裏面を水または氷水で冷却することで表面温度を20゜または10゜にコントロールした. 表面温度が高い程発光スペクトル強度は大きく, 60゜におけるスペクトルでは40゜のそれに比して4倍以上の増加がみられた. さらにビームスプリツタの温度40゜より試料温度が低くなると, 例えば20゜ではスペクトルが逆転し, 10゜では逆転したスペクトルの強度が増大した. 低温におけるスペクトルは, 前年度において報告したように, ビームスプリツタが光源となりこの部分からの発光が試料表面を照射し, さらに検出器に戻る際の有機表面層の吸収に基づくものである. 低温になる程スペクトル強度が大となる事から, ビームスプリツタの温度以上で得られたスペクトルは前記透過型のスペクトルによる影響が大で, これを補正する事によりさらに高感度化するものと予測された. 各スペクトルのバンド位置強度共に標準スペクトルと一致した. さらにセラミック表面ポリメチルメタクリレート(PMMA)について表面温度60゜と10゜で測定した. この時セラミック自体の透過スペクトルと比較し, そのバンド位置とPMMAのスペクトル形状について比較した. セラミックは1000cm^<-1>領域にブロードな強いバンドを示す. PMMAは1725, 1150cm^<-1>にバンドを示すが60゜では1725cm^<-1>は明瞭であったが, 1150cm^<-1>にもとずく発光エネルギはセラミックのバンドと重なり, 消失した. 10゜では逆に1725cm^<-1>バンドは逆転し, 1150cm^<-1>バンドの発光は検出できた. これによりビームスプリツタ温度より高温および低温での2種のスペクトルを用いて相互に補正することによりセラミック表面有機層のスペクトル測定が可能となると推定された.
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