研究概要 |
1.天然鉱物の硫酸処理;本試験研究では当初の予定を変更し, まず青森県内各地からクリストバライト岩の試料を採取して, X線回折・BET比表面積・染料の吸着能の測定から性状の検討を行った. その結果, 結晶構造の違いから4つのタイプに分類することができたが, 比表面積と塩基性染料の吸着能は全般的に大きいものの, 産地の違いによる差は認められなかった. 代表的な試料について硫酸処理を行ったところ, AlやFeの溶出率は低く, 結晶構造や結晶化度には変化はみられなかったが, ZSM-5の合成原料としての反応性は幾分向上した. 酸性白土については, すでに硫酸処理が工業的に実施されているので試験は行わず, 2では市販品を用いることにした. 2.ZSM-5の合成;硫酸処理した酸性白土及びクリストバライト岩を原料とし, 反応混合物の組成:〔0〜0.20(TPA)_2O-0〜0.20Na_2O-xAl_2O_3-SiO_2-46, 50H_2O〕, 温度:130〜170°C, 時間:6h〜7dayの条件でZSM-5の合成試験を行い, 最適条件:〔(TPA)_2O/SiO_2=0.10, Na_2O/SiO_2=0.10, 170°C, 2day〕を得ると共に, 核発生及び結晶成長に関する速度論的パラメーター, α-石英の結晶化抑制方法, 産地の違いによる影響, 生成物の性状など得ることができた. また, 酸性白土の場合には, テンプレート剤のTPAイオンを含まない系からも結晶化度は低いもののZSM-5を得ることができた. さらに, クリストバライト岩については, 未処理物でも十分合成原料となり得ることがわかった. 3.生成ZSM-5によるフェノール類の吸着;フェノールをはじめとして, P-位に各種置換基のついた6種のフェノール類について水溶液からの吸着試験及び加熱による脱着試験を行った. その結果, シリカライトに比べると幾分低いものの, 高い吸着能を有していることが確められた. さらに, 置換基による影響, 吸着等温式の適用, 繰り返し試験における安定性などが調べられ, 新規吸着剤の可能性が示された.
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