研究概要 |
1.我々は先に窒素錯体[W(N_2)_2(L)_4](L=三級ホスフィン)とMe_3SiIの反応により配位窒素がシリル化されたシリルジアゼニド(MNNSiMe_3)およびシリルヒドラジド(MNNHSiMe_3)錯体が得られることを報告したが, 同様な反応は収率はやや低いもののMoの類似錯体においてもより温和な条件下で進行することが判明した. また, Me_3SiSO_3CF_3によっても配位窒素のシリル化が進行した. 2.シリルジアゼニドおよびシリルヒドラジド錯体はメタノールや水と反応し, シリル基の脱離と末端窒素のプロトン化によるジアゼニドやヒドラジド錯体を与えた. シリルアニオンの攻撃によるシリルジアゼンの生成は今のところ成功していない. 一方シリルヒドラジド錯体mer-[WI_2(NNHSiMe_3)(PMe_2Ph)_3]をNa還元すると, 窒素錯体cis-[W(N_2)_2(PMe_2Ph)_4]の再生がおこるとともに, 低収率ながらHN(SiMe_3)_2とNH_3が生成していることが明らかとなった. 3.窒素下Me_3SiClとNaをcis-[Mo(N_2)_2(PMe_2Ph)_4](1)存在下で反応させるとN(SiMe_3)_3とHN(SiMe_3)_2が触媒的に生成することを見出した. 本反応においては, 還元剤としてはLiよりNaが, 触媒としては錯体1がそのW類似錯体よりはるかに高い活性を示した. また, 反応温度は30°C付近が最もシリルアミンの選択率がよい. 粒径8〜10μのNa微粒子を用いた典型的な例では, 触媒量はMe_3SiClおよびNaの0.5モル%, 30°C4時間の条件で, 基質転化率ほぼ100%, シリルアミン収率は21%, Moあたりのターンオーバー数はおよそN(SiMe_3)_3が14, HN(SiMe_3)_2が1である. 主たる副生成物はMe_3SiSiMe_3であり, 系をより希釈した条件にすれば反応速度は遅くなるものの, Me_3SiSiMe_3の生成が抑えられシリルアミンの選択率が向上することも明らかになっている. 本反応条件下では目的のシリルジアゼンの生成は認められていないものの, 今後さらに反応条件等を改善することにより触媒的なシリルジアゼン合成反応へと展開できるものと期待される.
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