研究概要 |
酸素酸化の進行あるいは酸素ラジカルの反応に伴い発生する極めて微弱の化学発光(ケミルミネツセンス)を高感度の光電子増倍管を用いて計測することにより, 石油製品, 油脂, 高分子化合物などの酸化劣化の度合を極めて初期の段階で検出すること, さらに抗酸化剤活性を迅速に, しかも定量的に評価することを可能ならしめる方法を開発することを目的として本研究を行ない, 以下に述べるような成果を得た. 酸素酸化の第一次生成物であるヒドロペルオキシドの熱あるいはラジカル誘発分解による分解で, 化学発光が生ずることが認められたが, 定量分析はむずかしかった. 微量のペルオキシドを含む溶液に, 次亜塩素酸ナトリウムを加えると強い化学発光を生ずることを認めた. 化学発光量とヒドロペルオキシド濃度の間によい相関性があることも確認し, この方法により, 微量ヒドロペルオキシドの検出, あるいは酸化度の測定に応用できることを見出した. さらに, 高速液体クロマトグラフィーと化学発光分析を組合わせ, イソルミノールの化学発光を高速液体クロマトグラフィーのポストカラムの検出手段とすることにより, 0.1ピコモルまでの超微量ヒドロペルオキシドの定性・定量分析法を開発することに成功した. 本法の感度は極めて高く, 油脂, 石油製品のみならず, 血しょうなどの生体試料にも応用可能であることを確認した. また, 一定強度の化学発光を放出する系を見出したが, その系に抗酸化剤を添加すると, 化学発光強度が顕著に減少し, 極小値をとったあと再び増加し, 抗酸化剤添加前の発光レベルまで戻ることを認めた. この極小値より, 抗酸化剤の酸素ラジカル捕捉反応速度定数を求める方法を開発した. この方法は極めて迅速で, しかも簡便であり, その応用が期待される. 以上のように, 化学発光を測定することにより, 酸化度の測定, 酸化生成物の分析, 抗酸化剤の評価を行なうという初期の目的は達せられた.
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