研究概要 |
オキシランと二酸化炭素とのシクロ付加反応による環状カーボナートの合成は, プロピレンカーボナートが, 近年, 高電圧電池の電解質として広く用いられるようになってきたことからますます重要になるものと予想される. 本研究は, より高機能なカーボナートを現実的な反応速度で製造するための触媒を開発することを目的としてきた. 2年間の検討の結果, 以下のような成果が得られた. (1) 有機スズハライド錯体と触媒をすることにより従来200°C近い温度を必要としていたものが, 室温から60°C程度で進行するようになった. 特に効果の高い触媒はR_2SnI_2-ホスフィン, R_3SnI-4級オニウム塩, R_2SnI_2-4級オニウム塩錯体(R=Bu, Me, ph)およびPh_4SbIである. (2) 二酸化炭素1気圧, 室温の条件でも通常の一置換オキシランでは付加反応が進行することが判明した. (3) 上記の触媒は, いずれもほとんどが中性に近い特質を持つことを明らかにした. 特に, 錯体化することにより遊離のスズハライドに比べて酸性度が低下するにもかかわらず, 活性が向上することは, 実用化触媒の性質としては非常に好ましいものである. (4) 錯体の活性を, その構造には非常に重要な相関関係が成立することも判明した. この知見は, これからの触媒設計に有益なものと考えている. (5) 活性の低い内部オキシランからも条件, 触媒を選択することにより高収率で対応するカーボナートが合成できる. (6) 本反応を立体特異的に行わせることは, Me_2SnI_2-HMPA錯体により可能となったが, オキシランの異性化を完全に防止することは困難であった. この点が今後の課題である.
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