研究概要 |
遷移金属触媒の作用により不飽和アルコールやアミンなどが分子内付加環化反応し, 複素環式化合物を与える反応を開発し, 精密有機合成に応用することを研究した. 含窒素複素環としては, アルカロイド合成への利用を考慮して置換インドールをアルキニルアニリンから合成することを検討し, 3-アリルインドールおよび3-ブロモインドールを高収率で合成した. 3位に導入するアリル基は反応系内に存在する塩化アリルが位置選択的に組込まれたものであり, この炭素-炭素結合生成を含む全反応に対して, ジメチルオキシランが助剤として使用されるのみで, パラジウム触媒の他には酸塩基等の反応剤を全く必要としない新しい反応である. NBSを存在させると3-ブロモ体が生成する. 各種インドール合成に利用できる中間体である. またアルキニルアミンからテトラヒドロピリジン合成を行う新方法も開拓し, ピペリジンおよびピロリジンアルカロイドの光学活性体合成への新しい展開を示した. プロパルギルアルコールに二酸化炭素と塩化アリルを作用させて環状炭酸エステルを合成できることを示したが, この反応はまたカルボニル化合物にリチウムアセチリドを反応させることが, このカルボニル化合物にアシル陰イオン等価体を反応させることになると云った意味をもたせることができることを示している. このように新規付加環化反応の開発により, 精密有機合成に役立つ反応が開拓されている. この付加反応の応用としてアルキニルケトンから位置選択的にジケトンを合成することができる. パラジウム触媒により温和な条件で反応するのでプロスタグランジンなどに適用しても選択的に反応することが示され, 新しいプロスタグランジン誘導体が合成できた. その他パラジウム触媒によるアセチレンへの新規ヒドロスタニル化, ビニルスズ化合物から含フッ素オレフィン合成, ビニルスズ化合物やアリルスズ化合物の新規合成法を開拓した.
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