研究概要 |
太陽熱を利用した海水淡水化装置の高性能化を目的として, 多段式熱拡散多重効用型淡水化装置の特性及び開発研究を行った. この装置は, 隔壁によって仕切られた伝熱裏面に多孔質ウィックを施し, その中を海水が浸透して蒸発する. 蒸発した水蒸気は, 次段の隔壁上面に拡散して凝縮する. この際に発生する. 水蒸気の潜熱, ただし第1段目においては入射する太陽熱によって, 海水を蒸発させる多段式多重効用型である. まず, 本装置の定常状態における静特性を, 熱及び物質収支式からシミュレーションするモデルを立て, 実験によって検証した. このモデルを用いて, 気象, 設計, 操作条件が造水量に及ぼす影響を調べた. また, スケールを防止できる流量の条件下で全造水量を最大にする, 各段への供給流量の最適計算を行い, 等比級数形に近似された. 第2に, 非定常状態におけるシミュレーションモデルを立て, 装置の動特性を調べた. このモデルは, 実験室及び野外での実験によって検証された. 大気温度以外の各種パラメータによる全造水量のステップ応答を求め, 1次遅れ系で近似された. 全供給液流量を, 日の出入りによる3つのパターンに変化させ, その最適計算を行った. さらに, 金属製の集熱板の代わりにコンクリート板を用いて, 畜熱効果を挙げることができた. 第3に, 本実験において海水は, 隔壁伝熱裏面の多孔質ウィックに保持されて蒸発を行うが, ウィックの乾燥やスケール発生の問題が生じるために, 供給液流方向の温度分布を考慮して, 熱及び物質移動を詳細に検討した. その結果, 蒸発面における総括伝熱係数の評価や熱対流効果を明確ににした. 最後に, 山形傾斜面における多段式多重効用型装置を試作し, 装置の傾斜角, 山形斜面の傾斜角, 供給液流量の設計, 操作条件により, 斜面の多孔質ウィックを流れる流動問題を実験によって調べた.
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