研究概要 |
(目的)ライフサイエンスやバイオテクノロジーの分野で生体膜は重要な研究対象の一つとなっている. とくに, 細胞膜レセプターや生体膜2重層構成資質の構造と機能の解明が急がれている. 膜脂質の場合, 従来から行われている放射性同位元素を用いる研究手法では, 膜脂質を定量的に取扱うことは不可能である. 本研究では, 高感度脂質分子種分析法を開発することにより, 膜脂質の代謝変化を分子種のレベルで定量界面活的に追跡することを計画した. (成果)生体膜よりリン脂質を抽出後, TLCによりリン脂質種に分離した. ホスホリパーゼCにより極性頭部を除きジラジルグリセロールとし, ジニトロベンゾイルクロリドと短時間反応させてジニトロベンゾイルジラジルグリセロールに転換した. ODS逆相HPLCによって254nmで分離定量するが10〜500ピコチルの範囲すべての分子種が定量できた. 移動層を変化させることにより, ジアシル型, アルキルアシル型, アルケニルアシル型が分離定量できた. 本法を用いて, ヒト血小板のアゴニスト刺激に対する応答過程におけるリン脂質分子種の変化を質量レベルで完全に解明することができた. とくに, アラキドン酸を含有する分子種の特異的水解の重要性がクローズアップされた. 一方, チャイニーズハムスターVF細胞を用いてエンドサイトシスにおけるリン脂質分子種の役割を調べた. この場合, オクタデカチノエン酸2モルを結合したリン脂質が形質膜からのエンドソーユム形式に重要な役割を果たしていることが明らかとなった. 今回開発することに成功した高感度脂質分子種分析法を使用することにより, 生体膜脂質の構造と機能との関係を解明する研究はさらに発展するものと期待される.
|