研究概要 |
興奮性組織が発生する電気現象に伴う組織周辺の微小電場を測定する目的で, 電場を一定の周波数で変調し, この周波数のみの信号を選択的に増巾することによって, シグナル・ノイズ比を改善し, 弱い電場の変動を記録することを計画した. 電場の周波数変調は東北金属工業製の積層型圧電アクチュエータによって電極を10〜50μmの振巾で機械的に振動させることで行った. パルス発生装置で弱い電場を作ったモデル実験では電場の変動を記録するには10〜20Hzの振動が適していた. 電極は作製の容易さ, 安定性, 使用の便利さなどからガラス電極が適していた. しかし, 振動によって電極自身に電位が発生するのが問題であったが, 先端径を2〜5μmにし, 電極抵抗を低く保つことによって実用上差し支えなかった. 電極内には外液と同じ生理的食塩水を詰め, 不関電極にも同じものを用いた. 増巾器としてはNF Electronic Instrument社のロックインアンプ(5600型)を用い, 振動子を駆勤する発振器の出力を外部からの参照信号として与え, 分析周波数レンジは10-120Hzに設定し, Lowpass fiterの時定数は通常100msecにしたが, 安定度が悪いときには300msecで用いた. この振動電極でモルモット胃壁の平滑筋層の小切片の周辺電場の記録を試みた. 不関電極は振動電極にできるだけ近づけ, これらの電極の電位は微小電極用の差動増巾器を介してロックインアンプに入力した. 20Hzで10〜20μmの巾で振動させると, slow waveを反映する電場の変動をとめたり, 電極を組織から離すと消失した. ただ, 周辺の電場はかなり複雑であり, ペースメーカーの存在などを確定するような分析は不可能と考えられる. 今後, 非常に小さい筋層を用いて筋線維の走行と電極の振動方向の関係などを正確に測定していくことが必要で, このような実験が可能になるように改善を重ねていく予定である.
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