研究概要 |
昭和61年度および62年度の研究成果をまとめると以下の様になる. 1.全動物標本 (1) ネンブタール麻酔下のラットの上部頸髄に, 脳幹の呼吸性ニューロンと同期して活動する吸息性ニューロン活動と, さらにネコでは記録されていない呼息性ニューロン活動が微小電極法により細胞外記録された. (2)ネコの上部頸髄呼吸性ニューロン群と横隔神経核に2種の蛍光色素をそれぞれ注入すると, 脳幹の呼吸性ニューロン群に二重標識されるニューロンが認められた. これをもって薄切標本におけるターゲットニューロンの標識法とした. 2.脳の薄切標本の残生 ラット脳の薄切標本(厚さ250-500μm)は断頭脱血後に摘出した脳より10分以内に作製されたときに, その大部分が標本として有用であり, 大脳皮質および海馬の薄切標本は, そのfield電位の発生を指標とすると, 少なくとも7時間は残生することが確認された. 脳幹については5時間まで確認. 3.脳の薄切標本におけるニューロン活動の光学的記録 (1) RH-155(NK-3041)あるいはNK-2761で染色した薄切標本の大脳皮質視覚野および海馬において, 電気刺激により吸光度の増加が認められた. この吸光度の増加は刺激の強さに依存し, 更に局所麻酔剤の塩酸Mepixacaine(0.2%液)で処理することにより可逆的に抑制されることから, ニューロンの電気的活動に由来するものであることが示唆される. しかし, 脳幹ではなお好結果が得られていない. (2) 膜電位依存性色素で染色した薄切標本の蛍光変化は, なお検出されていない. この点は, 測光系のSN比の改善および他の膜電位依存性色素の選択適用により, 克服されつつある.
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