研究概要 |
微生物の産生する毒素は標的とする細胞局所や分子への傷害特異性が極めて高いため, この作用を利用して疾病細胞の選択致死や医学生物学研究への応用への開発を目的とした. ジフテリア毒素及びその標的分子であるペプチド伸長因子(EF2)の遺伝子に関する研究:ジフテリア毒素フラグメントAを包んだ裸のリポソームはエンベロプドウイルスの細胞への感染による巨細胞形成細胞を選択的に殺すことが一般化できる事が解った. フラグメントBの7ケ所の領域のペプチド(18〜27アミノ酸残基)を合成しその活性をみたところ, Pro-382〜Val-401のペプチドのみが毒素を細胞内へ送り込む活性をもっていた. これはフラグメントAを用いたイムノトキシンの選択毒性増強に応用できる. 毒素耐性細胞よりクローニングされたADPリボシル化を受けないEF2のcDNAは医学細胞生物学研究への応用の可能性が示された. 毒素原性大腸菌:この菌の腸管への定着は線毛が担う事が明らかにされ, この蛋白分子の定着活性を担うペプチドによって感染防御薬としての可能性が示された. 志賀様毒素に特異的な10^5耐性細胞が分離され, これを用いて簡便な志賀様毒素検出法が開発された. ブドウ球菌ロイコシジン:この毒素は骨髄性白血病に対する感受性が正常白血球や骨髄幹細胞より高いことから, この投与は骨髄性白血病のマウスを4ケ月以上の延命効果を示し, 骨髄性白血病患者の骨髄をロイコシジン処理して白血病細胞を殺した後に患者へ返す事の可能性も明らかになった. サフラマイシン:枚射菌の生産するサフラマイシンAは強い細胞傷害性を示す一方免疫機能を賦活させる. この誘導体を数多く合成することに成切した. これ等のうち, サフラマイシンYd-1塩酸塩はメラノーマの肺転移の阻害に, YBは経口投与でS-180固型癌に有効であった. 一方このYBは免疫賦活作用も保持していた. 以上述べた様に微生物の産生する高分子物質を用いて医療への応用の可能性を強く示した.
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