研究概要 |
この研究の目的はAIDSウイルス(HIV)に高率に感染するMT-4細胞を用い, 正確で感度の良いHIVに対する中和抗体の定量系を開発することである. AIDSウイルスの中和抗体は, 感染個体のウイルスに対する防衛能力の判定と病態との関連において重要である. しかし, これまでの中和抗体測定法は, その感度, 特異性, アイソトープの使用, 手技の頻雑さなどの点で種々の問題がある. このため, 61年度に先ず3H-チミジンの取込みによる中和抗体測定法を確立した. この方法は, MT-4細胞にウイルスを感染させると急速なDNA合成阻害が起こることから中和抗体によるその阻止能力で抗体の存在と抗体価を知るものである. この方法は, 非常に高感度で抗体価で9000倍を示す血清もあった. また, 病状の進行と共に, その抗体価も低下する蛍光が認められた. 62年度には, アイソトープを使用せずにこれと同程度, またはこれ以上の能力のあるELISA法による測定法の開発を試みた. 同様にMT-4細胞を使用し, マイクロプレートに化学的に付着させ, HIV抗原陽性細胞をELISAにて測定した. この方法で検出される抗原は, HIVに特異的であり, 比較的感度も高く, 操作も簡単であった. しかし, この方法では血清が濃いところでいくつかの問題があり, 抗体陰性血清は, 120倍以下という表現しかできなかった. このため, チミジン取込み法と同じように浮遊培養後, ニトロセルロース膜上の酵素反応で抗原量の推定, 抗体価の推定を試みている. 一方, 中和反応の抑制試験に使用するウイルス構成成分の決定には, 手間取っている. これに関し現在, env遺伝子の塩基配列から予想されるペプチドを用いて検討を進めている. ^3Hチミジン法と酸素抗体法による AIDSウイルスの定量法と中和抗体測定法については, 特許申請を計画している.
|