研究概要 |
う蝕の活動度や, 近い将来においてう蝕罹患の危険度を, う蝕の病因論に基いて予測するための方策の確立を企図した. 本研究では, ラテックスビーズに, う蝕の原因菌であるStreptococcus mustansの特異抗体グロブリンを吸着させ, ついで, S.mutansの全菌体から抽出した超微量の抗原を添加したさい生じるラテックスビーズの凝集反応を指標として, 各個人のS.mutansに対する感染の度合を計量化しようとしたものである. 多くの実験の結果, 主として次に示すような結果が得られたので, 要約して提示する. 1.S.mutansに対するマウスモノクローン抗体を, ラテックスビーズに吸着させると, 肉眼で判定可能な凝集反応が認められた. しかし, その程度は, ポリクロナールなウサギ抗血清と比べるとはるかに微弱であった. 2.抗体の吸着体, 凝集反応担体としてのラテックスビーズは日本合成ゴム社製のG2801タイプのものが適当と判断した. 3.c型,g型S.mutans反応系(40μlの感作ラテックス+4μlの抗原抽出物)でのモデル実験の結果, 両菌型の免疫学的特異性に基いた時に凝集反応が観察された. 4.唾液の添加によりラテックス凝集反応は影響を受けなかった. 5.適切に抗体で感作されたラテックス粒子は, 10^5(C型),10^4(g型)個のオーダーの菌体より得た抽出抗原により明確な凝集反応を生じた. 以上より, 本研究で確立された原理と反応系を用いれば, 乳幼児の口腔内(唾液あるにはプラーク中の)S.mutansの特異的な検出が可能となろう.
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