研究概要 |
アデノシンは細胞内外で重要な働きをしていると考えられる. 近年その作用メカニズムがアデノシンVセプターを介して行われているという証拠が蓄積されつつある. しかし, アデノシンの示す生理作用は多彩であり, それらの作用を分離し, ある特定の作用のみを有するアデノシン誘導体をデザインすることは重要である. 特に高血圧症は未だ的確な治療法が確立されておらず, 降圧剤の長期連用に頼らざるを得ない. その場合副作用をさけるために又, 耐性を克服するために, 作用メカニズムの異なる降圧剤の開発が望まれている. 本研究所では, 種々のアルキニル基を持つアデノシン誘導体を合成しそれらの降圧作用を調べるとともに, それらの持続時間, 心拍数に対する影響を調べ, それらの中の作用の強力な化合物について, 自然発症高血圧ラットを用いて降圧作用を検討することを目的とした. 種々のアルキニルアデノシン類は, 対応するハロゲノ化合物(特にヨード体)と末端アセチレン類をパラジウム触媒を用いてクロスカップリングして合成した. 合成したアルキニル体の位置, 三重結合変換体, 糖部変換体の構造-活性相関を行ったところ, 降圧作用の最も強力であったのは, 2-アルキニルアデノシン類であった. 次に2位アルキニル基のアルキル基の長さを変えた誘導体を種々合成したところ, アルキル基が短鎖な化合物は降圧作用が強力であったが, 心拍数のかなりの減少をともなった. しかし, 長鎖アルキル基を有する化合物群でも緩和な降圧作用を示し, その持続時間も長いということが明らかになり, しかも心拍数に対する影響も減少した. これらはSHRに対しても緩和な降圧作用を示すことも明らかになったが, 今後, これらの化合物のin vitroでの作用メカニズムの解明, 既存の降圧剤との比較, 更には中枢神経系に対する影響を検討する必要がある.
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