研究概要 |
多環式構造を有する天然物の分子骨格構築法として分子環状付加反応は有用な反応である. 本研究では, 特にアレンを分子肉親ジエン剤として用いることにより従来の常識では考えられない程の高い反応性を有する環状付加反応を実現することに成功し, これを基本戦略として以下に述べる様な, 有用な合成反応を確立した. 更にこの手法により幾つかの天然物合成も行った. 1.多環式ラクトン合成法の開発. アレニルエーテルを親ジエン剤とする分子内Diels-Alder反応は極めて容易に進行するのみならず, 付加体は水和と酸化により対応するラクトン化合物に高収率で変換することが可能であり天然物の基本骨格として多くくられる多環式ラクトン類の一般的合成法として有用である. 本法をキーステップに用いることにより, ユニークな構造を有するノルセスキテルペン系天然物の(I)Platyphyllide及びセコフラノエレモフィランカルボラクトンの全合成に成功した. 特に後者は不斉合成にも成功した. 2.フラン環転送反応とイソベンゾフラの心発生法. アレニル・フラフリルエーテルの分子内Diels-Alder反応は容易に進行して一挙に縮環式フラン化合物を与えることを見い出した. 更に本生成物は酸触媒下容易に脱水して, 反応性中間体として知られるイソベンゾフラン類を与えることも判明した. これらの手法を用いて有用な整理活性を有するフラノセスキテルペン系天然物の基本骨格の簡易合成法を確立した. 3.新規インドール合成法の開発. アレンの高い反応性をジエナミドとの分子内Diels-Alder反応に活用することにより, 従来法とは全く異なる新奇なインドール合成法を開発することに成功した. 本法は非環式化合物から一挙にテトラヒドロインドール骨格を構築する点がユニークであり注目に値する. 本法を用いて, 興味ある生理活性を有するフェナンスリドンアルカロイドの一種であるHippadineの合成に成功した.
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