研究概要 |
表面顕微鏡法は表面の構造とそのへんかを高い空間分解能で明かにする手法として, ここ数年大きく進歩した. しかし, これまでの観察はおもに高温でなされた. 一方低温の表面は未開拓の分野であった. 最近, 低温でのアルカリ金属吸着等興味ある結果が報告されつつあり, 急速に関心がたまっている. 本研究計画は, 低温表面を観察する目的で特殊試料ホールダーを作製し, それをガス吸着の研究に応用することにある. 本研究計画のうち最も困難が予想されるのは, 試料ホールダーの作製である. 従来, 低温ホールダーさえ作るのが困難で, 色々試みられており, まだ基本的な解決がなされていない. しかし, ここでは試料加熱も併せて行う必要がある. 基本的な困難さは, 加熱時に試料を熱的に浮かせ, 冷却時に試料を低温熱浴に接触させることにある. われわれは, サファイアが高温で熱絶縁がよく, 50K位では銅に匹敵するほど熱伝導がよいことに着目して, ホールダーを設計した. 表面観察のためには, われわれが以前試験研究で開発した反射観察用ホールダーを基本とした. 冷却は, フロータイプで, ステンレスのパイプをサファイアに通し, それに電極-試料という順で冷却される. 従って, 加熱時の熱の逃げも少なくおさえられる. 予備的な実験として, これまで研究してきたSi表面に, 酸素分子ガス, 水素原子を吹き付け吸着構造とそのときのステップの形状の変化を観察した. 水素原子の場合δ7×7構造を作るが, そのときステップの形状変化はない. 加熱によって清浄な7×7構造に回復するときも同様であった. 酸素の場合, 7×7スポットに強度変化があるが, ステップの変化はない. 加熱によってSiOまたはSiO2の形成とそれらの昇華によって表面にはくぼみが出来る. 今後希ガスの吸着などに応用する.
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