研究概要 |
結晶の成長は, 時間とともに変化していく複雑な現象である. この複雑な過程を現象ごとに高精度で可視化して, 結晶成長に関連する現象を行なえるようにすることが, 本研究の目的である. ガリウムヒソ結晶は, 半導体結晶として重要であるが, 現在その成長メカニズムは良くわかっていない. これは, 安定領域がよくわかっていないせいでもあるが, 高温で, かつ高圧中で育成されているため, 最終的に出来あがった結晶の評価を通してのみ, 結晶成長メカニズムの研究を行なってきたせいである. いわば, 間接的な手法で研究していたわけで, 本研究では, より直接的な研究方法である, 上記のその場観察法をガリウムヒソ結晶の成長に適用すべく, 装置の開発を行なった. 本研究期間内に得られた成果は, 次のとおり. 1.10気圧, 1000゜Cまでの成長条件にたえうる, その場観察用結晶成長セルを開発した. これにより, 成長条件で十分制御しながら, 研究が行なえるようになった. 2.上記セル用の反射式, 赤外偏光顕微鏡システムを完成した. この解像度は, 他のX線や, レーザー散乱法での結晶に対比でき, かつ, リアムタイムで観察できる. また, 高倍率での観察にすぐれている. 3.上記の1, 2を組み合わせ, 200゜C以下での成長, 溶解実験をスタートした. 予想通り, 液と接している成長界面の高解像なパターンが得られた. ただ, より高温実験は現在進めている. また, 光学的に得られた観察像のコントラスト増強は, 今後の課題である. 4.実験のチャンスが少ない宇宙実験にも, このその場観察装置がすぐれていることがわかった.
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