研究概要 |
1.ヒト遺伝子のcosmidライブラリーよりペプシノーゲン遺伝子を単離, クローン化し, その制限酵素地図分析より, ヒトペプシノーゲンAには少なくとも3個の個別遺伝子が存在し, このうち少なくとも2個は染色体上に近接してtandemに並んで存在することを明らかにした. 2.ラット胃粘膜よりほぼ全長鎖のペプシノーゲンcDNAを単離, クローン化し, その全塩基配列を決定し, 本ペプシノーゲンをC型と同定した. 3.ヒト遺伝子ライブラリーよりペプシノーゲンC遺伝子を単離, クローン化し, その全エクソン(9個)と周辺塩基配列を決定した. 4.ヒトペプシノーゲンAのcDNAをプローブに用い, 日本人92名の血中有核細胞中のDNAを制限酵素分解し, 分解物をSouthern-blot法により分析した. この結果, 3種類のペプシノーゲンA遺伝子の存在が確認された. 5.ヒト, サル, ブタのペプシノーゲンAの活性化機構を比較解析し, 活性化機構に種属差がみられ, またヒトペプシノーゲンではアイソザイム間で活性化に顕著な差異があることが明らかにされた. 6.ヒトペプシノーゲンA(Iともいう)の主成分Pg5を用いて, モノクローナル抗体を調製した. これを用いて, Enzyme-Linked Immunosorbent Assay法(ELISA法)を確立した. この方法は, ペプシノーゲンAを8μg〜256μg/lの濃度範囲で高感度測定可能である. 内視鏡的に確認した健常人群354例, 活動期の十二指腸潰瘍群38例, 胃潰瘍群21例, 胃癌群26例につき, 血清ペプシノーゲンA値を本法で測定し, 各々平均40μg,108.8μg,51.9μg,26.8μg/lと潰瘍群で有意な高値, 胃癌群で有意な低値を得, 本法が胃病態の臨床検査に有用であることが示された. C型のELISA法は完成終段階にある. 7.胃潰瘍の胃内発生部位とペプシノーゲンA, C値との関連を検索し, その値の胃病態検査への有用性を示した.
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