研究概要 |
本研究は, 人工腎臓透析膜として実用化されているエチレンービニルアルコール共重合体(EVAL)を素材とした中空繊維に生理活性物質を固定することにより, 従来のものより, より機能化された人工腎臓素子の開発を目的として行われた. まず, 生理活性物質の固定化に先立ち, その基礎として, インベルターゼ, グルコアミラーゼ酵素のイオン結合による固定を, EVAL表面のアミノアセタール化により試み, その固定化条件の検討および固定化物の諸特性を評価した. その結果, 固定化率, 活性収率, また, 固定化物の安定性, 保存性等において良好な結果を得た. さらに, 反応物と生成物の分離特性についても検討した. 次に, これらの基礎的知見を基に, EVAL透析膜の機能化についての研究を行った. 第一に, 尿素分解促進を目的に尿素分解酵素ウレアーゼの固定, 第二に, 抗血液凝固性の向上のために, ヘパリン固定が試みられた. その結果, まず固定化ウレアーゼは, Native酵素に比べ, pH安定性の向上が認められた. 連続使用試験, また, みかけのMichaelis定数は, 尿素溶液(基質溶液)の中空系内の流速の増大とともに減少しNatire酵素のそれに近づいた. これらのことは, ウレアーゼ固定膜が尿素分解機能を十分に果たすことを示している. ヘパリン固定について, ヘパリン固定量は, 膜面のイオン交換容量に比例した. これは, 固定量を膜面のアミノアセタール化度の調節により, 容易に制御できることを示している. さらにヘパリン化膜を浸漬した血漿中のフィブリン出現時間の増大が認められた. また, この際の, 血漿中へのヘパリン徐放量は, 60分の浸漬時間で0.6〜1.3%と推算された. すなわち, ヘパリン化により, 抗血液凝固性の向上およびその持続が十分であることが示された.
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