研究概要 |
頚髄損傷による四肢や脳血管障害による片麻痺などで完全に麻痺した上肢の機能を再建するために, 携帯式マイコン制御機能的電気刺激(FES)システムを開発した. これは, 8ビットマイクロコンピュータをCPUとし, 3chの制御命令入力部, 16chの制激出力部を有し, そのサイズは9×14.5×5cmで, 重量は約500gのものである. 麻痺上肢を制御するための標準制激データは, 健常被験者の上肢動作中の筋電図の積分値をもとに作成した. 個々の患者の刺激データは, 被刺激筋の閾値, 刺激最大電圧を入力することによって自動的に作成できるようにした. これによって, 麻痺の種類, レベル, 部位の違いにかかわらず, ほとんどの麻痺上肢を制御することが可能となり, 汎用型のFESシステムとすることができた. 制御命令検知間のセンサーは, 麻痺のレベルに応じていくつか開発した. 最も重度なC_4四肢麻痺用として, 呼吸センサー, C_6四肢麻痺や片麻痺用として, 以下移動式ポテンショメータを用意した. このFESシステムを評価するため, 上肢機能がほとんど発色したC4四肢麻痺患者2例に適用した. 刺激データは手指, 手関節, 肘関節の各動作の筋電図データを基に作成した. 制御命令として患者の呼吸を利用した. 現時点では肩の制御は未解決なので, 手全体をBFO(Balancd Farearm Orthosis)上にのせた. これで制御を試みた結果, 患者は, 自分の意志で, 対象物に応じた握りパターンを選択し, 缶ジュースを飲んだり, 歯を磨いたり, 口紅を塗ったりする日常生活動作ができるようになった.
|