研究概要 |
本研究においては, 主としてポリアミングラフト共重合体に着目して研究を展開し, まず, グラフト鎖長とポリアミン含量の異なる種々のグラフト共重合体の合成法を確立した. すなわち, ジビニルベンゼンとN, N-ジエチルエチレンジアミンとの付加反応により得られる, アミノ基を有するスチレン誘導体を出発物質として, リチウムアルキルアミドを触媒に用い, 末端二重結合を有するポリアミンマクロマーの合成法を確立した. この際, 触媒とモノマーの比率を変えることにより, 得られるマクロマーの分子量規制が可能であることを明らかとした. このマクロマーとメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとのラジカル共重合によりポリアミンを枝に有するグラフト共重合体を調製した. このグラフト共重合体を製膜し, オスミウム酸で染色後, 透過型電子顕微鏡観察を行なうことより, ポリアミンを島状ドメインとするミクロドメイン構造の発現を確認した. 次いで, これらのグラフト共重合体をガラスビーズにコーティングして吸着体とし, カラムに充填してリンパ球の二大亜集団であるBリンパ球とTリンパ球との分離を推進した. その結果Bリンパ球が選択的に吸着体上に保持され, 短時間にカラム流出分としてTリンパ球を, また, カラム吸着分としてBリンパ球を得られる条件を確立した. 一方, 分離のメカニズムの解明も順調に進展し, リンパ球浮遊液のpHを変化させた実験結果より, 分離は主としてイオン性相互作用に基づくものであることが示された. 分離された細胞については生存率の測定を行ない, 基本的な細胞機能が保全されていることを確認した. また, 分離能, 迅速性, 取扱い易さなどを総合的に考慮して, 実際に用いられる場合のカラムデザインを行ない, その基本的な設計と性能評価とを推進した結果, 実用上充分満足できる性能を発揮することが確認された.
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