研究分担者 |
野口 民夫 大阪大学, 医学部, 助手 (70135721)
津田 洋幸 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (10163809)
渡部 烈 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (00057316)
立木 蔚 東北大学, 抗酸菌病研究所, 教授 (90006065)
村松 正實 東京大学, 医学部, 教授 (10035454)
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研究概要 |
佐藤はラット肝前癌病変の優れた指標酵素グルタチオン Sートランスフェラーゼ胎盤型(GSTーP)の陽性細胞が遺伝子毒性のある肝発癌剤投与後に早期から発現し, 非遺伝子毒性の発癌剤ではこのような細胞の発現がないことから, 肝発癌過程の解析にこの細胞の検索が重要であることを指摘した. またGSTーPは, 他のGST分子種に比し, ビリルビン,胆汁酸などの生理的肝内在性物質によって活性阻害を受けないなど酵素的特性を有することを明らかにした. 村松はGSTーP遺伝子をラット肝からクローニングし, その5'上流領域の制御領域をCATアッセイ法で検討した. 5'清流2.5kdと60bpのエンハンサー領域に, 発癌プロモーターTPAによって転写促進される遺伝子に共通の配列TREを見出し, ラット線維芽細胞株3Y1で, 内在性GSTーP遺伝子がTPAによって転写促進されることを確認した. またTREに結合する蛋白因子として, トリ肉腫ウイルスASVー17の癌遺伝子junの産物で, TPAによって活性化されるAPー1とみなされる因子を同定した. 立木はラット肝化学発癌過程におけるチロシン残基キナーゼ(TyrーK)の変化を究明し, 肥大性結節, 肝癌にその活性が著明に(約8倍)上昇すること, その場合のTyrーKはsrc遺伝子産物に対する抗体で免疫沈降し, 両者の相同性を明らかにした. 野口は肝癌で発現するピルビン酸キナーゼのM_2と筋肉に存在するM_1アイソザイムが共通の遺伝子の転写産物からスプライシングの違いで生成することを明らかにした. 津田はラット肝前癌細胞巣に発現する酵素を多数同時検索し, 多くの酵素が発現消失するが, GSTーPの発現頻度が最も高いことを見出した. 渡部は, GSTーPがある種の発癌剤のエポキシドに対して, 他の分子種と異なる立体異性体選択性を有することを明らかにした. 今後の問題としてはGSTーP遺伝子などの活性と癌遺伝子の活性化との関連性を究明する.
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