研究分担者 |
竹永 啓三 千葉県がんセンター, 研究所, 主任研究員
細川 真澄男 北海道大学, 医学部, 助教授 (20001901)
小倉 剛 徳島大学, 医学部, 教授 (00028490)
明渡 均 大阪府立成人病センター研究所, 所長
木全 弘治 愛知医科大学, 助教授 (10022641)
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研究概要 |
1.がん細胞の接着因子:a.ラット腹水肝癌細胞相互の接着因子(70kDa)に対する抗体に反応する分子がヒト脳腫瘍に存在し, 分化型腫瘍では陽性に, 浸潤性の強い未分化型腫瘍では陰性で, 病理診断的価値をもつ. b.高転移性マウスの乳癌細胞と血管内皮層との接着は膜結合性ヒアルロン酸と内皮層に在るプロテオグリカンM型との選択的結合に基づくことを実証し, ヒアルロン酸合成に宿主血清中の85kDaの因子が関与し, この因子の除去が, 肺転移の低下をもたらした. c.薬剤による可逆的転移能の促進は, 細胞の接着性の増大によるが, p36トロポミオシノアイソフォームの発現減少と関連を示唆する成績をえた. 2.がん細胞の浸潤, 遊出機序:a.腹水肝癌細胞の腸間膜への浸潤は宿主単球系細胞の活性酸素の作用で促進されるが, 腸間膜に存在する非透析性で易熱性の走化性因子による選択的な遊走促進作用を受けている. 正常肝の酸/エタノール抽出分画に認められた浸潤抑制因子(3-4kDa)は上記走化性因子による癌細胞の遊走を阻止する. b.癌細胞の間質内浸潤性(試験管内での遊走性)には癌細胞と宿主の線溶系因子の関与, 線溶系の活性化により生じた組織内プラスミンによる細胞のコラゲナーゼの活性化が役割をもつことが示唆された. 3.がん転移と宿主の免疫機能:a.ラットおよびマウス腫瘍の原発巣切除後の自然肺転移の免疫学的抑制に, 合成低分子免疫賦活剤の効果, 2種のリンホカインやBRMとの併用効果を検討したところ有意の転移抑制を認めた. b.原発巣切除後のマウス乳癌細胞のリンパ節転移の抑制は, 免疫L3Y4+細胞と特異的腫瘍抗原細胞との同時投与による特異的免疫の増強によって得られた. 4.腫瘍血管特性を利用した転移抑制法は, 昇圧, 降圧をコンピューター・システムで制御することによって, 実験的に著しい化学療法効果の増強を認め, 「水攻め化学療法」と呼ぶ.
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