研究概要 |
1.日本人前立腺癌の疫学的研究 ビタミンAやβカロチン摂取不足は前立腺癌の危険因子であるが, 70才前後に分け検討すると70才以下は摂取不足と発生の関係がなく, 70才以上では前立腺肥大症との比較で2.5ー3.7倍,非前立腺疾患とは2.2ー4.8倍ではった. 緑黄色野菜由来のβカロチン摂取不足による危険度上昇も70才以下ではみられず, それ以上の群で前立腺肥大症および非前立腺疾患に比較しそれぞれ2.3ー3.0倍および2.2ー2.4倍であった. 果物由来βカロチンは差がなかった. 2.前立腺癌の病態および組織学的分化度の国際間比較 日本人の前立腺癌は米国日系人や米国人と同じ平均年令であるが, 韓国人や中国人は前者より低い. 臨床病期は日本人に有転移病期が多く, この傾向は韓国人にさらに著しいが, 日系人や米国人は日本人より早期癌が多くみられた. 中国人は米国人に近かった. 組織学的分化度は日本人,日系人,米国人とも約3分の1が低分化癌であるが, 後2者は高分化癌も多い. 低分化癌の比率は韓国人,中国人にさらに大きくなった. 3.日本人前立腺癌の内分泌環境,アンドロゲン受容体および内分泌療法に対する反応性 臨床癌においては, 性ホルモンおよびいくつかの下垂体ホルモンは対照と差がみられない. アンドロゲン受容体は約60%にみられ, これは内分泌療法に対する反応性が高く予後が良かった. 4.アンドロゲン依存癌の特徴 マウス・シオノギ癌115をモデルとして検討し, アンドロゲンは分裂の増加と, 壊死の減少という両面の効果の結果増殖を促進することがみられた.
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