研究概要 |
1.体液中, とくに夾雑物の多い胃液中の胆汁酸の測定はきわめて困難とされて来たが安定同位体を内部標準物質として用いる逆同位体希釈法を利用した胆汁酸の高感度測定法を確立することによって胃液中の胆汁酸を高い信頼度をもって測定することが可能となった. この方法によると残胃内のみならず正常の胃液中にも恒常的に胆汁酸が存在することが明らかとなり, 胃癌一般の発生にも何らかの作用を及ぼしている可能性が示唆された. 2.胆汁成分が胃癌発生を促進することを示唆する実験は内外に数多くみられるが, 厳密にはこれらはすべて胆汁, 膵液を混えた十二指腸液を胃内に逆流させて得られた納果である. そこであらかじめ胃切除を施行した動物の残胃内に, 十二指腸液, 胆汁,膵液を夫と別個に作用させた実験から, 胆汁,膵液単独よりも, これらを混在させた十二指腸液がもっとも強く発癌とかかわることが明らかとなった. 3,胆汁酸の胃癌発生促進作用のメカニズム解明の目的でin vivo,invitro 実験を行い以下の結果を得た. 1)4種類の一次胆汁酸を用いた実験から, 夫との胆汁酸で誘導されるODC活性は, それら胆汁酸を発癌物質とともに与えて得られる腺癌の数に相関する. 2)胆汁酸と発癌物質を用いたin vitro…実験から, 胆汁酸が細胞膜に何らかの変化をおこさせ, 発癌物質の細胞内移行を増強させる可能性が示唆された, 3)ラットに胆汁酸を経口投与した実験で, 胆汁酸投与15分後よりcーfosおよびcーmyc遺伝子の転写が上昇し, 30分〜60分後に約10倍に達することが明らかとなりin vivoにおいても発癌プロモーターによって癌遺伝子の転写が上昇することを確認した.
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