研究概要 |
細胞増殖因子カスケードの上流から下流にいたる各段階の解析が, 各段階において鍵となる蛋白質因子の同定, その遺伝子構造, 発現制御機構の解明を中心として進展した. 具体的には以下に述べるような研究成果を得た. 1, ヒトインスリン受容体遺伝子のプロモーター領域の構造と決定した. 2, Cキナーゼ(PKC)の遺伝子構造の解析から, PKCには3種類の遺伝子に由来する4種類の分子種が存在することを明らかにした. 3, ウシ血小板上清画分にチロシンキナーゼ(M.W.71K)を見い出し精製した. 4, 中間径フィラメントのAキナーゼによるリン酸化はその脱重合をひきおこすが, PKCによるリン酸化ではこのような変化が認められなかった. 5, 細胞増殖制御は複数のG蛋白質によって媒介されていて, PDGFによる初期の応答およびボンベシンによる遅い応答が百日咳毒素(IAP)によって抑制されることが示された. 6, ヒトG蛋白質のサブユニットの染色体遺伝子の構造解析から, 哺乳動物には少くとも3種類のGiの遺伝子が存在することを明らかにした. さらにGsαの遺伝子の全構造も決定された. 一方酵母菌においてもG蛋白質相同遺伝子(GPA1およびGPA2)が単離された. 7, rasに対するモノクローナル抗体Yー259はP21の結合又クレオチドの解離反応を特異的に阻害することを明らかにした. 8, エールリッヒ腹水ガン細胞をインターフェロン処理すると細胞融合をおこし多核細胞を生ずることを見いだした. 9, 固型腫瘍の形成に必要な血管形成における内皮細胞の増殖にはbasicFGFが自己促進的に働く可能性が示唆された. 10, 酵母におけるアデニル酸シクラーゼの構造遺伝子(CyR1)産物のC末端側に触媒反応を行なう機能領域があり, そのすぐN末端側にRAS遺伝子産物と相互作用する機能領域が存在することが明らかとなった. 11, 分裂酵母よりras類似遺伝子であるYPT遺伝子ファミリーに属するyho遺伝子を単離した.
|