研究概要 |
1.水溶媒中でミセルを形成するように胆汁酸を脱離基としたDACHPのミセル形成型白金錯体を合成し,その抗腫瘍活性を検討した. これられ錯体は全身投与可能な脂溶性錯体であり, マウス白血病L1210やマウス悪性黒色腫瘍B16メラノーマに対して,in vivoで著明な効果を示した. 脱離基分子上の水酸基の数,位置,配置が油層への溶解度,ミラル形成,抗腫瘍活性等に大きく影響を与えることを明らかにした. 2.2′ーdeoxyー2′ーmethylideue cytidine(DMDC) の抗腫瘍活性を更に検討した. その結果, マウス白血病以外にヒト由未白血病細胞やヒト由未カルチノーマに対しても効果が見いだされ, DMDCが白血病のみならずヒト固型腫瘍にも有効であることが分った. 又, このDMDCは鶏卵法でもヒト肺癌に制癌効果を示した. 作用機作の解明を含めた広範な前臨床実験を目下実施中である. 3.1,4ーbutanediol diー2,2,2ーtrifluoraethanesulfonate(BFS) と1,4ーbutanedioldiisethionate(BIT)を用いて,chronic myeloid leukemia(CML)に対する治療薬としての特性を既知制癌剤のbusulfanと比較検討した. その結果,busulfanは骨髓抑制以外の致死的毒作用を有し,しかもmgeloid系への選択毒性が,BFS,BITに比べて小さい事が判明した. 從って,BFS及びBITは,毒性面からも,またmyeloid選択毒性面から見てもbusulfanに優るCML治療薬となる可能性が強く示唆された. 4.臨床応用可能な分化誘導物質をめざして,多数の新規核酸関連合成化合物を検討の結果,2,4ーdiethylー7,7,8,8ーtetramethylーcisー2,4ーdiazabicyclo〔4.2,0〕Octaneー3,5ーdioneがヒト前髓球性白血病細胞(HLー60)に対して強い分化誘導効果と増殖抑制効果を示すことを見出した. また,この新規分化誘導物質に,抗白血病剤(daunomycin)やビタミンA誘導体と併用すると,相乘的に作用が増強されることを見出した.
|