研究分担者 |
寺田 雅昭 国立がんセンター番究所, 部長 (10124421)
田原 栄一 広島大学, 医学部, 教授 (00033986)
廣田 映五 国立がんセンター, 研究所, 室長 (50124425)
中村 恭一 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (70110492)
菅野 晴夫 癌研究会, 癌研究所, 所長 (10085615)
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研究概要 |
1.胃未分化癌の初期像を明らかにするために,ヒト胃微小癌を集積して検索した. その結果, 癌細胞は腺顕部から発生し直ちに腺顕部自身を破壊して増殖することがわかった. また,微小環境のレベルでは,癌は多中心性に発生することが示唆された. ビーグル犬を用い,実験的に胃に未分化癌を作製すると,やはり癌は幽門腺腺顕部から発生していた. さらに単一腺管レベルの変化では,腺顕部に2層構造として異常細胞が存在しており,癌発生の最も初期の像である可能性が高い. 2.中間帯(移行帯)からの胃癌の発生の頻度が決して低くない点に着目し,中間帯に存在する微小癌を調べると未分化癌である率が幽門腺や胃底腺領域よりも高かった. 腺の萎縮や幽門腺化に関係している中間帯からの未分化癌の発生も問題とすべきことがわかった. 3.胃未分化癌にはリンパ管侵襲の著明なものと,リンパ管侵襲を示さないものとがある. 前者は組織型が混合型未分化癌であるか,純型未分化癌の中でもDNA量がdiploidでないheteroploidyを含むmosaic patternのものが多かった. 後者は純型未分化癌でDNA量がdiploid patternのものが多かった. 4.胃未分化癌の代表的な培養株細胞KATOーIII株から新しい癌遺伝子としてsam遺伝子を発見した. この遺伝子は染色体11番の長腕2312あるHSR(homogenously staining region)に存在する. 切除胃癌では,20例中3例にこの遺伝子の増幅を認め,いずれも未分化癌であった. 5.胃未分化癌の主要な部分を占める胃スキルスの病理発生を解決するためスキルス胃癌増養株細胞と線維芽細胞とを双子管培養法で培養した. その結果,胃癌細胞から線維芽細胞を増殖させ,コラーゲン産生を促進する因子が放出されていることが明らかにされた. 又, 乳癌培養株細胞にも同様の作用があり,何らかの増殖因子を放出していることが推定された.
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