研究概要 |
北村はX染色体の不活化によってモザイクになっているPgkー1^a/Pgkー1^bマウスの骨髄細胞を用いて, in vivoにおける血液幹細胞のクローン性増殖について研究を進め, 血液幹細胞に欠陥のあるW/W^Vマウスの全赤血球生産を長期にわたってまかなえるほどの自己再生産能力を持った血液幹細胞に対しては, 5ーfluorouracil(5FU)は影響を与えないことをみいだした. 5FU処理によって骨髄中の濃度が高まるのは, もう一段分化した幹細胞らしい. またPgkー1^a/Pgkー1^bマウスの骨髄細胞を少数移植後にW/W^Vマウスの全赤血球がクローナルに置換された場合には, 宿主のB細胞, T細胞にもそのクローンに属すると考えられる細胞がみられた. すなわち1匹のW/W^Vマウスの全赤血生産を支えるほどの自己再生産能力を持った細胞はB細胞やT細胞にも分化する能力があると考えられる. 須田はメチルセルローズ中に芽球コロニーを形成する能力を持った細胞の中には大顆粒リンパ球に分化しうるものがあることを示した. 高久は前白血病状態から急性白血病へと進展した症例について経時的に3回にわたり骨髄細胞を採取してDNAを抽出した. Nーras遺伝子の13番目のユドンの点突然変異と相補的な合成オリゴヌクレオタイドをプローブに用いてハイブリダイゼーションを行ったところ, 芽球数の増加に比例してハイブリダイゼイションの強度が増加した. この結果からNーras13番ユドンの点突然変異は, 白血病化の比較的後期に作用して, 前白血病状態から急性白血病への進展に関与する可能性が示唆された. 山田はヒトのミエロペルオキシダーゼのcDNAを単離し, TPAの作用によってHLー60細胞が分化を開始する時, 24時間以内にミエロペルオキシダーゼのmRNAはTPA処理前の10%以下になることを示した. さらにミエロペルオキシダーゼの遺伝子のプロモーター領域にTPAーresponsiveな塩基配列をみいだした.
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