研究分担者 |
新津 洋司郎 札幌医科大学, 助教授 (10045502)
清滝 千晴 大阪大学, 医学部, 助手 (50177953)
山本 雅 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (40134621)
竹市 雅俊 京都大学, 理学部, 教授 (00025454)
村松 喬 鹿児島大学, 医学部, 教授 (00030891)
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研究概要 |
本研究の目的は癌細胞の転移能を規定している細胞と宿主との相互作用のうち, 主として癌細胞側の諸要因を解析することにより, 転移の予防, 治療法向上のために役立つ基礎的資料を提供することにある. 本年度得られた成果は以下の如くに要約される. (1)クローン化した細胞接着分子カドヘリンのcDNAをカドヘリン活性のないL細胞に導入したところ, カドヘリンの発現がみられ, かつ, 細胞間接着性が上昇した. 更にマウス卵巣腫瘍の高転移株では低転移株に比べてカドヘリン発現量が低下していることがわかった. また低転移株ではその発現が均一であるのに比べて高転移株では不定で, この形質と転移能との関連性が示唆された. (2)肺転移能がやや上昇したMCマウス肉腫細胞に種々の癌遺伝子(Hーras,Kーras,myc,Nーrasの一部)を導入しても転移能の増強効果は認められなかった. Nーrasの部分導入により得られた複数のクローンを移植したマウスでは継代三代目で既に単一クローン化していること, また移植初代でも同一個体の異なる転移巣は同一クローンから形成されること, 異なる個体では転移形成クローンも異なることが明らかになった. (3)高転移癌が示す血小板凝集促進活性はトリプシン感受性膜蛋白の血小板への直接作用によることを明らかにした. この膜蛋白に対する単クローン抗体による解析から, 認識する抗原は分子量44kDaの膜蛋白であり, これが血小板凝集活性の本体であると考えられた. (4)MethA肉腫由来の高及び低転移クローンの増殖因子に対する反応制を比較すると, EGF,PDGFにより共に増殖促進, TGFーβにより抑制されるが, 三者共存下では高転移クローンによる強い増殖促進がみられた. (5)腫瘍特異的マクロファージの腫瘍特異的活性化はIFNーγによるプライミングの次いデLPSによるトリガリングが必要であることを明らかにした. 活性化マクロファージの腫瘍破壊機構には活性酸素, TNFあるいはIL+1等は直接的には関与しないことが証明された.
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