研究概要 |
温熱処理の有効な治療を行うために, 温熱処理による細胞致死の機構が十分解明されなければならない. また, 温熱処理と放射線照射や化学療法剤と併用したときの増感効果の解析は新しい併用療法の可能性が生まれる. さらに, 温熱処理の生体反応を解析することは, 癌治療が個体全体との関係からとらえていく必要がある故に重要である. これらの問題点に対して, 今年度は以下の研究成果を上げた. 1.正常細胞と癌細胞の熱感受性の相違:細胞が指数関数的に増殖しているときは, 正常細胞と癌細胞の熱感受性の違いはないが, 細胞密度が増し, 定常期に達しると癌細胞の方が熱感受性が高いことがわかった(渡辺). 2.温度上昇による熱耐性の誘発と薬剤による修飾:温熱処理の臨床おいては, 病巣温度が37℃の体温から43℃の治療設定温度に時間をかけて温度上昇させる. この温度上昇時間が20分以上になれば熱耐性が誘発されることが示された(奥村). また, この熱耐性はブレオマイシンによって阻止されることがわかった(加納). 3.温熱・薬剤併用の増感修飾剤:温熱処理とアドリアマイシンを併用すると増感効果がみられる. セファランチンをさらに追加すると増感効果が増強された(川崎). また, シスプラチンを併用したときに, OKー432を投与したときにも増感効果の増強がみられた(中村). 4.温熱処理による生体反応:マウスの癌移植部位にあらかじめ放射線を照射しておくと, 癌移植後, 癌の増殖が遅れるとともに温熱処理の効果が高まり, 放射線治療後の温熱処理が有効である可能性を示した(田中). 麻酔下で温熱処理を行うと加温部位の冷却効果が低下した(小坂).
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