研究分担者 |
瀬戸山 千秋 熊本大学, 医学部, 講師 (60040250)
近藤 寿人 京都大学, 理学部, 助教授 (70127083)
上田 国寛 京都大学, 医学部, 助教授 (00027070)
丹羽 太貫 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助教授 (80093293)
高見沢 裕吉 千葉大学, 医学部, 教授 (60009107)
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研究概要 |
胚性腫瘍細胞を分化誘導した時, 分化初期段階で発現が増強する遺伝子, MK1の構造が決定され, 新しいDNA結合タンパク質を規定している可能性が示された. またこの分化初期段階で発現が速やかに停止する遺伝子FT27の構造もほぼ決定された. このタンパク産物はカルシウム結合部位そしてDNA結合様部位を併せ持ち, 触媒部位を欠くプロテインキナーゼC様の構造をとっていた. レチノイン酸レセプターとの部分的ホモロジーも認められた. 胚性腫瘍細胞に強く発現される免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーのはじめてのメンバー(GP70)も見出された. この分子は膜通過部分の近くに免疫グロブリンV領域様のドメインを持っていて, 分化初期段階での細胞間識別に関与する可能性が強い. 胚性腫瘍細胞で発現が阻止されているモロニー白血病ウイルスのLTRに結合するタンパク質がゲルシフトアッセイとフットプリンテイングで追求された. LTR結合性の抑制因子はエンハンサーの72bpリピートよりさらに上流に結合することが明らかになった. クローン化した遺伝子の機能を検証する一般的手法の開発も進んだ. Nーmyc遺伝子とβーガラクトシダーゼの融合タンパク質遺伝子をラット胎児繊維芽細胞に導入すると, Nーmycの作用が阻害され, transformed fociの生成が抑えられたのである. ヒト胚細胞腫瘍細胞株PAIから神経ロゼットが形成される条件も設定された. また, 胚性腫瘍細胞から軟骨への分化過程が解析され, HI細胞(分化最終段階の前駆体H細胞がオートクリン増殖を開始したもの)由来の新しい増殖因子を必要とする細胞から, これを必要とせず, 代りにインシュリンを要求する細胞へと分化すると結論された. ヒト胚細胞腫瘍の診断に有効な新しい抗糖鎖抗体, そして胚性腫瘍細胞の分化誘導作用がある, 新しいポリADPーリボース合成阻害剤も見出された.
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