研究概要 |
ヒトの正常上皮細胞及び上皮性悪性腫瘍細胞を培養初代より血清を含まない培養液を用い, 長期培養を行う実験系を確立すること, それを用いて増殖因子,分化誘導因子,増殖阻害因子等の解析を行うことを目的とした. 1.ヒト正常表皮細胞の培養については分担者 許南浩は2〜3mm^2の微小皮膚片を出発材料として, 2〜3週間表皮細胞の培養が可能である系を開発した. これらを色素性乾皮症患者, 乾癬症患者の生検皮膚片に応用して, DNA修復能, ビタミンD感受性の検討に利用することが出来た. 培地には現在のところ10%FCSが用いられているが, 之はMCDB等を用いた無血清〜低血清培地に置き換えることを検討中である. ヒト正常気管支上皮については宇多小路は, 高アミノ酸培地に微量金属成分を補い, 蛋白, ペプチドとしては1%透析FBS,インスリン,トランスフェリン,EGFのみで纎維芽細胞の殆ど混じない上皮細胞シートを約4週間増殖させることが出来た. それ以後には上皮細胞の増殖の低下と纎維芽細胞の増加を認めた. 2.ヒト上皮性悪性腫瘍細胞の培養, 特に低血清〜無血清培養は分担者平郡,高橋等と共に許,宇多小路も試みており, 1年目として多くの経験を蓄積しつつある. 現在のところ, 上皮性腫瘍細胞では1%FCS培地よりは10%FCS培地の方が培養成績が優っており, これに伴う纎維芽細胞の増殖を始何に抑えるかが解決されなければならないと考えられる. 無血清培地, 化学的に観知の成分のみによるヒト上皮性細胞の長期培養には未だ増殖因子,固相の表層基質,気相の数件等の探究が必要であると考えている. 3.これらヒト上皮細胞へのDNAトランスフェクションによる細胞の悪性化は試みられたが, 変異株は得られなかった.
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