研究概要 |
ヒトアデノウイルス12型E1A遺伝子から作られるタンパクの第3ドメインの変異がトランスフォーメーションの効率及び形態の双方の影響すること, また, 同遺伝子の変異の必ずしもトランス抑制能とトランスフォーム能とに等価に影響しないことが伴った. 同ウイルスのE1B遺伝子の19Kタンパクがインターフェロン遺伝子の発現を促進することが伴った. 同ウイルスによるトランスフォーム細胞が宿主体内で増生するのには, MHCー1抗原の発現低減に基づく免疫原活性低下が原因となっていることを示す結果をえた. E1A遺伝子のマウス腹水癌細胞核抽出液での転写にcisで働く上流DNA領域を見いだした. E1A遺伝子の転写終結信号がE1B遺伝子の下流に4個連続して存在することを示す結果をえた. ラット非株化細胞にVーab1遺伝子を注入する実験で培地中にデキサメサゾンを添加するか, E1A遺伝子を同時注入した場合にのみ細胞がトランスフォームすることを認めた. B型肝炎ウイルスDNAを組み込んだからといってアデノウイルス5型のげっし類細胞トランスフォーム能は高くならなかった. その理由は, げっし類細胞内では同肝炎ウイルスX遺伝子が発現していないためらしい. ヒトEGF形容体遺伝子の変異で, プロモーター活性は変化せず, E1A産物による転写被活性化だけが変化するようなものは見つからなかった. 3Y1細胞をトランスフオームするのに必要なトリアデノウイルス1型DN鎌領域を, 全体を100とすると, 0ー7.3と22.5ー28.2の計5.7キロ塩基対にまでに限局し, その塩基配列を決定した. この領域はヒトアデノウイルスDNAのどの領域とも高い相同性を示さなかった. トランスフォーム細胞内では前者は地図単位減少方向に転写され, 後者では増加方向に転写されることを明らかとした. 3Y1細胞を完全にトランスフォームするのに必要なイヌアデノウイルスDNA領域を左端の32.9%までに限局した. 左端より11.3%の塩基配列を決定した.
|