研究概要 |
経動脈ターゲティング化学療法は臨床適応性に富む治療法であるが,その効果を高めるには第1次ターゲティング,すなわち腫瘍血管床への集積と腫瘍間貭への透過性に優れた抗癌剤担体複合体が必要である. この複合体は間貭滲透性に富む径1〜2μ以下の微小担体と,これを封入した50〜200μの大型担体からなる二重構造体であることが望まれる. この種の複合体の研究は殆んどされてないので,本研究では製法に関する基礎を検討した. 外壁をなす大型担体は血管床で比較的短時間で分解し,これに対して内部の微小担体は分解速度が遅く間貭内に滲透してから抗癌剤を放出することが望まれる. また担体素材は生体適合性であることも必要条件である. このような見地から微小担体の素材としてアルブミン(Alb),大型担体素材としてポリ乳酸(PLA)を選択した. また抗癌剤は定量の簡便さから,BRMの一種であるPSKを用いた. PSK(2)とAlb(15)の混合溶液を綿実油中でエマルジョン化し,加熱固化ーエーテル処理によって粒径1〜2μ,PSK含有量17%のマイクロスフェア(ms)を作製した. このPSKーms 1gとPLA 0.5gを有機溶媒系に溶解,相分離法によって平均粒径200μのマイクロカプセル(mc)を得た. このPSKーDーmcのPSK含有量は10%,静置生食水中10分間のPSK溶出率は9%,それ以降は溶出の殆んどない徐放性剤形となった. 製造条件の改良により,従来Albーmsの欠点とされていた高い初期薬物放出率,工程中の薬物喪失ならびに低い薬物含有量などはほぼ克服され,また二重構造化が可能なことが示された. しかしPLAの分解速度はそれ程速くなく,また局所の分解酵素活性によって影響されるので,至適条件を設定するには至らなかった. この点も含め,今後さらに多角的な研究が必要と考えられる.
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